あるところににカボチャパンツをはいた王子様がいました。

王子は部屋でじっとしているのが嫌いで、見つからないように、よく城から抜け出していました。

今日もいつもの様に部屋を抜け出し、高い壁を超え、森の奥へ急いだ。

森には沢山の動物がいて、城の中では教えてくれないことを教えてくれる。 
 
 森の奥にある大きな木を目指して走った。と、そこには赤いドレスを着た女の子が立っていた。

女の子は王子に気付き、 

「私は魔女よ!どうせあなたも私を笑いに来たんでしょ!!」 

と吐き捨てた。 

「魔女って何?」そう答えた王子の顔は真剣そのもので、ふざけているようには見えなかった。 

女の子は溜め息をついてその場を去ろうとした。 

「君の名前は?」 

女の子は足を止めた。 

「私に名前はないわ」 

「僕にも名前がないんだ。みんなは王子と呼んでいるけど…」 

「私とアンタは違いすぎる」 

 肌の白い女の子には、赤いドレスより白いドレスが似合うのではと王子は思った。 

 自分のことを魔女だと言い捨てた女の子は、その綺麗な顔立ちをきつく見せるメイクをしていた。

大きな目の周りを縁取る黒いアイシャドウ、そして白い肌によく映える鮮やかな赤い口唇。

王子は本当に綺麗だと思った。 

「君はどうしてこんなところにいるの?」 

「みんなアタシを見ると、眉をひそめたり、石を投げつけたりするわ。アタシはあんな奴ら大嫌いなの。好きなのはこの子だけ」 

 そう言って彼女は、傍らの大きなブナの木に目をやった。 

「この子はアタシを邪魔者扱いしたりしない。アタシに唾を吐きかけない。アタシを醜いと詰ったりしない……。」 

 よく見ると、彼女の体には、古いものから新しいものまで、無数の傷跡が残っていた。だけど醜い…?本当にそうだろうか? 

「君は醜くなんかないよ。本当に綺麗だ。」 

 王子の言葉に、彼女の黒真珠の様に美しい瞳がハッと見開いた。と、同時に彼女は自分の肩を抱きしめしゃがみ込んだ。

王子なぜか“不安”もしくは“恐怖”を感じた。その感情の合間には、今まで感じた事のないものが…。 

気付けば王子は彼女の肩へ手を伸ばしていた。しかし、彼女は自ら光を得た瞳から光を失わせようと引き締め王子を見上げた。

王子は伸ばした手を握り、膝を着けて目を細めた。両腕の中に彼女を入れたいと思ったが、今の力では彼女が粉々に砕けてしまう。 

 そっと王子は立ち上がり、ブナの木を見上げた。枝と葉の隙間から射す光を受け我に返った。

陽の光を理由に目を細めたかのように、再び彼女へ目をやると、彼女の瞳はそっと王子を見つめていた。

どうすればいいのか戸惑う王子に微笑みかけた。 

「またきっと、絶対会えるさ」 

 王子が言うと、彼女はそっとブナの木に触れた。 






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